アセスメントって何?
- とある男性動物看護師
- 2016年10月14日
- 読了時間: 8分
それでは、今日はアセスメントについて書いていきたいと思います。

アセスメントとは アセスメント(Assessment)は、評価・査定という意味合いを持ち、 看護実践のための前段階に行われる過程のことを指します。 同じ病気を持つ患者動物でも、発現症状や程度、進行具合など、個体によって異なります。 それゆえ、各患者動物に合った最適な看護を実践する必要があり、そこで重要となるのが各患者動物の状態を正しく評価することなのです。 アセスメントは看護過程の一つとして数えられ、看護過程には大きく分けて以下の5つの項目が存在します。

① 看護アセスメト 患者・家族からの情報収集と問題の明確化 ② 看護診断 看護アセスメントによる情報の確認とデータの分析 ③ 看護計画 問題解決のための看護計画の立案 ④ 看護介入 看護計画に基づいた看護行為 ⑤ 看護評価 看護行為による成果および看護計画変更の必要性の評価 看護を行う上では上記の5つの過程が存在し、 アセスメントは“情報収集”と“判断”、つまり「観察」することが大きな役割であり、 各患者動物に合わせた最適な看護を決定するために最も重要となる項目であるため、 アセスメントがしっかり出来ているかどうかで、看護ケアの質が決定づけられると言っても過言ではないのです。 2、アセスメントの必要性 アセスメントは5つの看護過程のうちの第一段階に位置づけられており、 主に、バイタルサインや病歴など患者動物の情報収集と、患者家族からの主訴を基に、 患者動物の状態(全体像)を的確に分析することが役割です。 患者動物の状態を適切に見極めることが出来なければ、 適切な看護実践が不可能になり、場合によっては病気に対する早期治療が難しくなるだけでなく、合併症の発症リスクが高まってしまいます。 患者動物の状態(全体像)を把握することにより、 早期治療、合併症のリスク低下のみならず、患者動物の苦痛・ストレスの軽減、 さらに早期治療による病床の回転率UPなど、患者動物だけでなく病院にとっても良好に作用するため、アセスメントは非常に重要な役割を担っているのです。 3、アセスメントの実践と理論 アセスメントを行うために、最も重要となるのが情報の収集と分析です。 バイタルサインにおいては診察することで容易に把握できますが、 症状や生活習慣など、適切な看護実践のために、さまざまな情報を収集しなければいけません。 しかしながら、情報をうまく収集できたからと言って、適切なアセスメントが行えるというわけではなく、得た情報をまとめる能力(分析力)も必要になってきます。 また、分析によって問題を明確にする能力も不可欠です。この分析・問題の明確化の過程が最も重要であり最も難しいものですが、 ヘンダーソン:14の基本的欲求 ゴードン:11の機能的健康パターン マズロー:5つの人間のニードの階層構造(欲求5段階説) などの看護理論を枠組みとして考えれば、論理的かつ素早くまとめあげることが出来るため、当院でもこれを参考に全員で取り組んでいます。 これら中でも基本的な生活の機能的パターン分類した『ゴードン』の看護理論を当院でも参考にしているため紹介します。 11の機能的健康パターン 項目 ①健康知覚・健康管理 既往歴、現病歴、健康状態、病気への理解-喫煙・アルコール・薬物・アレルギーの有無 ②栄養・代謝 -身長、体重、BMI、体温の変動・悪寒、発汗の有無-嗜好・偏食・間食・食欲・食事制限の有無-爪・毛髪・皮膚・体液の状態と、感染の兆候 ③排泄 -排便の回数・性状・量、不快感や残便感の有無-排尿の回数・性状・量、不快感や残尿感の有無-ドレーンからの排液(量・性状・皮膚の状態) ④活動・運動 呼吸、脈拍、血圧など、バイタルサインの正常確認歩行状況と姿勢、身体の障害・運動器系症状の有無セルフケア行動・移動動作など運動機能の正常確認 ⑤睡眠・休息 睡眠時間・熟眠度、入眠障害・睡眠中断の有無健康時の休息の有無と休息の仕方 ⑥認知・知覚 視力・聴力・味覚・嗅覚・触覚・知覚など感覚器の状態疼痛・掻痒感・眩暈・しびれの有無と程度意識レベル・言語能力・記憶力・理解力の状態 ⑦自己認識・自己概念 表情・声・話し方、疾病や治療に対する想い・感情不安・絶望感・無力感の有無自己尊重、家庭や社会における役割遂行と自立 ⑧役割・関係 家族の構成や家族に対する想い、キーパーソンの有無職業(学校)における内容・役割・満足度 ⑨性・生殖 月経事情、生殖器の状態、妊娠・分娩回数性関係に対する問題の有無と満足度 ⑩コーピング・ストレス耐性 ストレス因子の有無、ストレス発散方法家族や友人など、身近な相談相手の有無 ⑪価値・信念 宗教・宗教的習慣の有無とその内容家族のしきたり・習慣の有無とその内容 上記の内容に沿って得た情報を整理し、存在している問題に着眼していきます。 (これがなかなか難しく、時間もかかります) 動物看護では11項目すべてに当てはめることは難しいので、上記より8つに絞り動物病院オリジナルのアセスメントシートを作成しています。 当院のアセスメントシート ↓ https://drive.google.com/open?id=0B7hdwr8Tmh1FMTByTmJ2THNTSU0 マズロー:5つの人間のニードの階層構造(欲求5段階説) 人間の欲求は段階的に存在し、 ①生理的欲求→②安全欲求→③社会的欲求→④尊厳欲求→⑤自己実現欲求の順に、 ピラミッドのように5段階で構成され、低階層の欲求が満たされると、 より高次の階層の欲求を欲する性質を持つ、というのがアメリカの心理学者、 アブラハム・マズローの欲求5段階説です。 フェーズ 欲求 解説 第五段階 自己実現欲求 自分の能力を引き出し、創造的活動がしたいという欲求 第四段階 尊厳欲求 認められたい、尊敬されたいなど心理的充実に対する欲求 第三段階 社会的欲求 集団に属したい、仲間が欲しいなどの帰属に対する欲求 第二段階 安全欲求 自分の健康、生活や経済的な安定に対する欲求 第一段階 生理的欲求 食べる、寝るといった生活活動における欲求 例えば、自力排便ができない患者動物は、①生理的欲求の段階におり、それより高次である②安全欲求、③社会的欲求、④尊厳欲求、⑤自己実現欲求に、現状では達することができません。 この状態では、心理的に負担が大きく、不安や緊張状態が持続していくことになります。 よって、自己排便ができるような優先的看護が必要となるのです。 マズローの欲求5段階説は、あくまでも心理的影響に関する説ですが、 看護において当てはまる点が多く、アセスメントにおいても役に立つことが多いため、頭の隅に置いておきましょう。 「SOAP」形式での考え方 看護過程において、患者から主観的・客観的な情報を収集した後、 それらをアセスメントとし、今後の看護における計画を立てるといった、 一連の流れが存在します。これを「SOAP」形式と呼び、SOAPを基にカルテなどに記載することがよくあります。 SOAP形式は、いわば論理であり、上手なSOAPは論理的であると言えるため、 SOAPを把握することは非常に大切で、適切な看護過程のために不可欠な要素なのです。 ・[S]ubject(主観) Subjectというのは主観的見解を意味し、患者動物の様子や家族の訴えのことを指します。 ・[O]bject(客観) Objectは、客観的見解を意味し、誰がみても分かる事実のことを指します。よって、ここには“たぶん”や“だと思う”などの曖昧な記述がNGであり、確かな情報のみを記載します。 ・[A]ssessment(アセスメント) Assessmentは、評価を意味し、入手した客観的な事実、それに対する援助者の評価、課題分析を記載します。要するに、得た情報をもとにした専門的な判断結果のこと。 ・[P]lan (計画) Planは、上記の事実に基づいた計画のことを指します。今後どのように治療を行うのかなど、今後の展望を記載したり、必要な修正事項などもここに記載します。 上記のようにSOAP形式を基に、ヘンダーソンやゴートンなどの看護理論を活用して、アセスメントを行います。(当院ではゴードンの看護理論を用いています) ただし、適切にアセスメントするためには、相応の情報が必要になります。 つまり、SOAPの「S」「O」にあたる部分で、特に「O」である客観的な事実は非常に重要です。この情報が多ければ多いほど、質の高いアセスメントが可能であり、情報が少なければ充実しません。それゆえ、いかに多くの情報を得られるかがポイントになってきます。また、アセスメントに繋げるために、1つの情報を掘り下げていく必要があります。 適切なアセスメントを行うためには、慣れも重要ですが、 骨組み(看護理論)への理解と把握、各症状における観察力・分析力が重要となってきます。 また、“~だから○の結果になる”というような論理的思考が必要不可欠です。 現職の動物看護師の中でも適切にアセスメントできない人は多いものの、的を得た正確なアセスメントを行うことで、患者動物の負担軽減や早期治療に繋がるため、的確なアセスメントができるよう、看護理論やSOAPに対する理解はもちろん、病気や症状に関する知識も深めておきましょう。 今日も難しい内容でしたが、少しずつ勉強して明日に生かすことのできる 看護過程を学んで欲しいと願っています。 明日は、看護診断について紹介します。(当院の動物看護師が最も苦しみました 汗)
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